堀川を清流に
  堀川1000人調査隊2010

         活動の記録



   第34回 堀川1000人調査隊で報告された

     市民調査の結果をご紹介します。


    堀川の干満による水位の変化を、
    堀川の上流から中下流まで4つの水域に分けて分析し、
    木曽川導水に期待できる水質改善のメカニズムの説明を試みました。


    
   
⇒名古屋市による浄化の取り組みの報告はこちら

        ⇒第34回調査隊会議の様子についてはこちら

        ⇒木曽川水系連絡導水路事業の説明についてはこちら

        ⇒堀川・新堀川の水質浄化に向けたさらなる取り組みはこちら





事務局より   令和6年3月23日
 
   令和6年3月23日(土)に、桜華会館で開催された、第34回堀川1000人調査隊会議で

  事務局から発表させていただいた、第34ステージの市民調査の総括報告を紹介いたします。


    ⇒市民調査報告 PDFのダウンロードはこちら



さて、最初に連絡事項です。2点あります。

1)次回の調査隊会議について

次回調査隊会議については9月か10月くらいに計画していますが、
4月にならないと会場を押さえることができないため、現時点では日程は
未確定です。

  決まり次第また一斉メール等でご連絡をさせていただきますので、ご了承ください。

2)次回の一斉調査の日程と狙いについて

 お手元に配布した資料の通り、次回は6月6日(木)に計画しました。

 この日は、月食や日食がある日ではありませんが、昼間の満潮と干潮の潮位の差が
232cmもある水位の変化の特別に大きな日になっています。

 お手元の資料の表面下側、「調査時の状況」のところをご覧ください。

 今回の一斉調査の大きな狙いですが、この期間の直前期間の週末には
「堀川クルーズ」が開催されています。

 私たちは、船の定期的な運航が、堀川の水質改善に役立つのではないか
という仮説をたててこれまでも検証を続けていますが、同時に庄内川からの
毎秒0.3トンの暫定導水があるかどうかということも、大きな要因になっていることに
気が付いています。

 前々回3年前の5月26日に一斉調査を実施したときは、コロナで堀川クルーズが
実施されていませんでした。

 前回1年前の6月5日に一斉調査を実施したときは、堀川クルーズは実施されて
いましたが、たまたま大雨によるトラブルで庄内川の導水がとまっていました。

 今回は、庄内川の導水と堀川クルーズが両方とも実施されている状況が期待でき、
これまでと違った条件下で、導水と堀川クルーズによる水質改善効果が確認できるかも
しれないと考えています。

 なお、今日はご説明を省きますが、調査報告書の97ページにありますように
昨年10月30日に実施していただいた秋の一斉調査では、導水とクルーズが
両方実施され、その効果が確認されています。

今回は、春から夏のシーズンでも同じように効果が確認できるかどうかが
一斉調査の大きな狙いになっていますので、ご参加できる方は、ぜひよろしく
お願いいたします。



れでは、本題に入りたいと思います。

第34ステージに皆さんに実施していただいた市民調査から、
今回新しくわかってきたことを、お手元にお配りした資料と、スライドで
ご説明をしたいと思います。

今回の皆さんの調査結果から、「木曽川からの導水が実施されたときに期待できる効果」と、
 「恒久的導水に向けて解決してゆかなければいけない課題」が、より鮮明にみえてきました。

  今日は、それをできるだけわかりやすくご報告したいと思います。

まず資料の2ページをご覧ください。

 この目次の中の黄色い文字で書かれた項目が、今回新しく追加された話題です。

1)今回、特に新しい分析を試みたのが、名古屋港の潮位の変化、すなわち
 干満による堀川の水面の高さの変化による堀川の水質への影響の分析を
 試みたことです。


  満潮時と干潮時では、堀川の印象がかなり違う、ということは、
 これまでも皆さんは、肌感覚でその違いを感じてこられたことと思いますが、

 17年間、15,000件の膨大なデータの蓄積によって、水位の変化による印象が、
 場所によっても違うことがわかってきました。

 それを61ページからご説明します。


2)次に新堀川についても、同じ分析を試みました。
 これを85ページからご説明します。


3)また、水位の変化に着目するきっかけになったのは、実は、
 堀川上流部で見かける「オナガガモ」というカモが、
 水位の低いときは北清水橋付近にやってくるのに、
 水位が高いと姿が見られない、という現象に気が付いたことでした。

 これを118ページからご説明します。


4)最後に、私たちはこれまでに堀川の護岸の除草をしないと
 堀川の水環境が改善しない、ということを名古屋市に申し上げて、
 名古屋市に予算を付けていただき、今年度は、年2回の除草を
 実施していただきました。

 その効果と残された課題について113ページからご説明します。


 時間の制約の関係で、以上に項目を絞ってこれからご説明をさせて
いただきますのでどうぞよろしくお願いします。



それではまず、9ページをご覧ください。


 昨年12月の第34ステージ終了時点で、これまでに皆さんが
定点観測し入力してくださったデータは、14,976件 
現時点では軽く15,000件を突破しています。


このビッグデータがこれからご報告する様々な新しい気づき、発見に
つながっていることをまずもってご報告します。


本当にありがとうございます。


61ページをご覧ください。

 右上に、今回あらたに試みた、潮位の区分、つまり水面の高さによる
区分が表示してあります。


 以下、混乱を避けるため潮位=水面の高さを「水位」と表現します。

 
 TPというのは、東京湾の平均海面の高さで、TP0は、いわゆる海抜0mです。

 名古屋では、NPという、名古屋港基準水面(名古屋港の最低水面)をあらわす
指標も用いられることがありますが、これはTPと比較すると141.2cm低くなって
います。

 つまり、NP141cmがほぼTP0と一致します。

 今回は、TP0つまり海抜0mの水面を境に、上に50p刻みで2段階、
下に50p刻みで2段階の水位の区分をして分析を行いました。


62ページをご覧ください。

堀川の川底の断面のイメージがあります。


 黒い実践がTP0すなわち海抜0mです。

 堀川の水面はTP0をはさんで、上に1.20m、下に1.37の間で
上がったり下がったりしていることが分かります。

 水色の下のオレンジ色の部分は海水が停滞しやすい状態に
なっていることが分かります。


 その下の新堀川のイメージを見ると、新堀川の水は、川底が深く
最上流までほぼフラットで、非常に川底の水が停滞しやすい状態である
ことがお分かりになるかと思います。


63ページをご覧ください。

 ここでは、堀川の水域を4つに分けて、左から右にかけて
下流から上流に向けて4つのグラフに並べています。


 それぞれの場所で、横線グラフが左から右に縦に4つ伸びていますが、
これは皆さんの観察で印象が悪いとき、つまり「きたない」「ややきたない」の
合計をパーセントで表しています。


一番上のオレンジ色は、TP50p以上で一番水位が高いとき、
その下の黄色が次に水位の高いときでTP0からTP50までのとき、
その下の緑色がTP0(つまり海抜0mより低く)TP50cmまで、
一番下の青い色は最も低いTP−50cm以下の干潮の時のグラフです。


 これを見ると下流の大瀬子橋から松重橋では、水位が下がった
一番下のグラフが54%と最も印象が悪いことが分かります。


 特徴として水位が低いときは、上流区間から汚れた水が流下してくる、
と書かれています。


それではその上流にあたる、「松重橋から朝日橋下流」の区間は
どうでしょうか。


 この区間は納屋橋など名古屋の中心部を含む観光資源としての
堀川にとって、最も大切な区間ですが、どの水位の時も、
「悪い印象」が60%を超えてしまっています。


中でも一番下の水位の低い干潮時には81%、つまり5回観察して
うち4回は印象が悪いという厳しい結果になっています。


 その下の項目を見ると、泡については、川底の泡が多く、
それも水位の低いときに多い。


 臭いについては、水位の低いときに特に多い。

 どぶ臭は水位が低いときに特に多い、と書かれています。


 色については、白濁系・ヘドロ系の色が多く、水位の低いときに
特に多いと書かれています。


 これについては69ページに詳しいグラフがあります。



69ページをご覧ください。


 各区間で4本ずつ棒グラフが立っています。

 先ほどと同じように、水位が高いときはオレンジ色のグラフ、
水位が低いときは青色のグラフになっています。

 下流の2つの区間では水位の低いときの青いグラフが
著しく印象の悪いことがわかります。



70ページをご覧ください。


ここではにおいの種類についてグラフで表しています。

下の2つが下流部です。

右下の松重橋から朝日橋上流では、右側の2つの水位の低いときに
どぶ臭が特に多いことが見てとれます。




ついでに上流の方を見ていきます。


69ページをご覧ください。


 右から2つ目のグラフ朝日橋から城北橋までのグラフを見ると、
棒グラフの背が一気に低くなっていることがよくわかります。


 また城北橋から上流では、水位の低いとき以外はほとんど
においを感じないことがわかります。


 それでもやはり、水位の低いときには、どぶ集を感じる割合が
高いことがわかります。


もう一度63ページに戻ってください。


右から2つ目のグラフを見るともう一つ興味深いことが分かってきました。


朝日橋から城北橋の間では、水位の高いとき、つまり満潮に
近いときの印象が際立ってよいことがわかってきました。


これは、名城水処理センターの放流水が、お天気さえよければ
最近はとてもきれいなため、上げ潮で水処理センターからの放流水が
下流に流れて行ってしまわず、この付近に押し上げられて
とどまっていると、とても水がきれいに見える、ということを示しています。


また上流から流れてくる庄内川からの導水も、上げ潮に押し戻されて
この付近に滞留し、その相乗効果で印象が良くなっていることが
分かります。
それでは、城北橋から猿投橋の感潮区間の最上流はどうでしょうか。 


 63ページの一番右のグラフをご覧ください。


 水位の低い、干潮時間帯が際立って印象が良くなっていることが
分かります。


 水位の低いときは、猿投橋から志賀橋の区間は川底が露出して、
透明できれいな庄内川の導水と、上流部で放流された
浅層地下水がせせらぎのように流れているため、とても印象が
よくなっていることが確認されています。


 このように、今回水位によって堀川を区間別に分けて分析することにより、
庄内川からの導水や、名城水処理センターの放流水という
「堀川の水源」が堀川の印象に与える効果、役割が、これまでより
一層明確になってきました。




 65ページをご覧ください。


 下の黄色い枠の中には、前回の調査隊会議でご報告した
木曽川からの導水に、直接的に期待できる効果を、
もういちど掲載しています。


確認のため、これを読んでみます。


@木曽川からの導水で、希釈による有機物濃度の低下、
  貧酸素化の改善が期待できる。

A木曽川からの導水で、水中への直接的な酸素の供給が期待でき、
  貧酸素化の改善が期待できる

B木曽川からの導水で、流速の増加により有機物を含む浮遊物の
  局所的な沈降、体積の抑制が期待できる。

C木曽川からの導水で、水温の低下や、
  夏場などの水温の上昇の抑制が期待できる。

 その結果、貧酸素化の改善や、南方系の外来魚種の生息域の減少や
 ヒートアイランド現象の緩和が期待できる。

D木曽川からの導水で、浮遊ごみの滞留の減少が期待できる。


 この木曽川導水の直接的な改善効果に加えて、
 少し遅れてあらわれてくる効果があることに私たちは気づきました。


 すなわち川底の有機物が減少し、硫化物が減少する、
川底の水質や底質がさらに改善する、生態系が回復する、
そして堀川自身の持つ浄化能力が回復する、という
市民の印象の改善スパイラルが回り始めることが期待できる
ということを前回の調査隊会議で報告させていただきました。


そのまま65ページをご覧ください。


前回のこの報告をさらに多角的に確認するため、
今回は、水位別に分けたデータの再分析を行ないました。 


その結果、特に水位の低いときに、朝日橋から猿投橋の上流域で、
現在、庄内川の導水が果たしている水質改善効果が
非常に明確になりました。


 猿投橋までの堀川上流部は、名古屋港という、入江の先端のような
地形になっているため、潮の干満で水がよどみやすく、その結果、
水面や水中の浮遊物質が停滞しやすく、特に川幅が広くなっている
北清水橋から田幡橋などの区間では流速が遅くなって、
新たなヘドロが堆積しやすく、川底からの泡も多くなっています。


しかし今回、水深の浅いときには、庄内川の導水が水を下流に流す力となって、
水が淀むことを防ぎ、堀川上流部の印象をよくしていることがはっきりしました。


そしてこの庄内川の導水に、さらに木曽川からの導水が加わったとき、
特に水位の低いときには、大きな効果が現れることが期待できることが
みえてきました。


木曽川の導水の押し流す力が加わることにより、特に水位の低いときに、
川幅の広がった北清水橋から田幡橋などの区間で、川底に浮遊物が
堆積することを抑制し、水質の改善が期待できることも見えてきました。


さらにまた、逆に水位の高いときには、名城水処理センターから放流される
透明度の高い処理水が、朝日橋から城北橋の水域をきれいな水で
満たしていることもわかりました。


 このきれいな水処理センターの放流水は、水の塊が上げ潮に押しあげられて
満潮時には猿投橋方面まで遡上し、この上流区間は、庄内川・木曽川の
導水とともに大量のきれいな水で満たされることが期待されます。


 そしてその後、下げ潮に転じて、そのきれいな水が朝日橋の下流から
松重橋間の名古屋の都心の貴重な水辺に向かって流れてゆくことが期待
できることもわかってきました。


現在は水位が低いときに特に印象の悪い都心の中流部も、
水量の少ない干潮時に、上流からきれいな水が流れてくることにより、
印象がかなり改善することが期待できます。


 この名城水処理センターの高度処理は、2007年から2010年に実施された
前回の木曽川導水社会実験の時には、まだ実施されていませんでした。


ですから当時、木曽川導水の中流部への印象改善効果には
一定の限界がありました。


しかしその後、水処理センターの放流水の改善が進み、
それに木曽川からの導水の効果が加わることによって、
特に水位の低いときに上流部から中流部にきれいな水が流れてくることで、
都心の中流部の印象改善の効果が高まることが期待できます。




繰り返しますが、今回、水位の低いとき、高いときに分けて
データを分析したことによって、現在の庄内川の導水や、
水処理センターの放流水の果たしている役割が明確になったことは
非常に大きな成果でした。


木曽川導水・庄内川導水、そして水処理センターのきれいな放流水が
満潮時に上流部に蓄えられ、水位の低くなる干潮時に中流部に
きれいな水が流れ込むことにより、中流部の水質や川底の改善も
期待できることが説明できたことは、とても大きな意義があったと思います。


以上でこの項目についてのご説明をおわり、
次に新堀川についてみてみたいと思います。




85ページから94ページまでが新堀川についての報告になります。


まず85ページをご覧ください。


下の絵は、新堀川のイメージ図ですが、

堀川との合流点を最下流として立石橋まで、

そして立石橋から向田橋まで、

向田橋から宇津木橋まで、

宇津木橋から堀留の最上流まで

の4つの区間に分けて、名古屋港の潮位、すなわち水位の高さを
堀川と同じように4つの区分に分けて、今回初めて分析を行いました。



86ページをご覧ください。


先ほどもご覧いただきましたが、上が堀川の川底のイメージ、
下が新堀川の川底のイメージです。


一見してお分かりになるかと思いますが、新堀川は水深が深いために、
名古屋港の干満で水位が変化する上っ面の層の下に、
動きづらく停滞しやすい分厚い層があって、
これが新堀川の浄化を難しくしていると考えられています。



87ページをご覧ください。


下流から上流にかけての4つに分けた水域とも、
一番下の水色のグラフでお分かりのように、
水位の低いときはいずれも新堀川の印象が悪いことがよくわかります。


またその中でも、右から2つ目の向田橋から宇津木橋までの区間で
特に印象が悪く、その上流側、下流側ともに印象が悪くなっています。


もうひとつ、右から二つ目の、向田橋から宇津木橋までの区間を見ると、
水位が高いときも、その周りと比べて非常に印象が悪いことが分かります。



このメカニズムを説明しているのが89ページですが、
ちょっと飛ばして先に93ページをご覧ください。


ここでは、下流から上流までの4つの区間の水位別の
「におい」を感じる割合をグラフにしています。


これを見ると右側の2つ、向田橋から宇津木橋までと、
宇津木橋から堀留までの上流区間で、

特に水位が下がったときの青い色のグラフが
くっきりと背が高くなっているのがわかります。 



94ページをご覧ください。

これは、臭いの種類を区間別、水位別に見たものです。


右上の最上流の宇津木橋から堀留の区間では、
黄色い色が目立つのが分かります。


この黄色いのは腐卵臭、つまり卵の腐ったにおい、硫化水素臭です。


その左側は、一つ下流の向田橋から宇津木橋、
その右下が立石橋から向田橋、
その左側が立石橋から堀川との合流点までの最下流ですが、

下流に行くにしたがって黄色い硫化水素臭が少なくなり
どぶ臭が多くなっていることがわかります。


また、それぞれの区間の一番左側の水位が高いときのグラフでは
硫化水素臭が少なくなっていることが分かります。

 



92ページに戻ってみてください。


ここでは色について分析しています。


右上の最上流部では、黄色のグラフで示している白濁系の色が多く
水位の高いときも4割以上が白濁系になっていること、
そして水位の低い一番右側のグラフでは、ほぼ6割近くも白濁系の色に
なっていることがわかります。


4つの区間のいずれも水位の低い特は5割から6割の割合で
白濁系の色をしていることがわかります。


しかし、水位が次第に上昇してくると、下流に向かって
だんだん白濁系の色が少なくなっていることがわかります。




どうしてこういうことが起こるのか。


そのメカニズムについて仮説を立て、説明しようと試みたのが
先ほどの89ページと90ページのイラストです。


90ページをご覧ください。

新堀川における白濁のメカニズムの仮説が説明してあります。


右上のホリゴンの吹き出しに説明がありますが、簡単に言うと、
新堀川は下流から上流まで川底が深く、水が入れ替わりにくいため、
特に川底の方の水は潮の干満があっても水が入れ替わりにくく、
停滞しやすい、つまり水が淀みやすい構造になっていると
考えられています。


このために、上流の区間では、新堀川の主な水源となっている
堀留水処理センターから、年間を通して温かい放流水が流入していること、
そして雨が降ったときに、合流式下水道から有機物を含む浮遊物質が
流れ込むことによって、このため、新堀川の上流区間は、
こうした浮遊物が川底に沈んで堆積しやすい環境になっていていると
考えられています。


このため川底や水中で貧酸素化が進み、白濁のもととなる硫化物が
大量に作られ、川底から浮き上がってきて、これが白濁や腐卵臭の
原因になっている。


これがこれまで私たちが考えてきた仮説です。




さて、これを水位の変化と区間で分析しなおそうとしたのが
89ページのイラストです。


89ページをご覧ください。


上の図が水位の高い満潮時、下が水位の低い干潮時のイメージです。


水位の高いときは、右の方の上流部の川底でできた
白濁のもととなる物質が川底から持ち上がって、
上流部に白濁化した水が停滞しています。


それが干潮に向かって水位が下がってくると、
白濁した水が下流の方に広がってゆき、
水圧も下がるので泡も発生し、大気中に腐卵臭
つまり悪臭が発散されるようになります。



もういちど94ページをご覧ください。


右上の最上流部では、水位の高いときも水位の低いときも
常に白濁を表す黄色い部分が多いのに対して、

ほかの3つの場所では、水位の高い一番左のグラフに対して、
右に向かって水位が下がるにつれて、黄色い部分、
つまり白濁が広がってゆくことがよくお分かりになるかと思います。



新堀川に関しては、まだまだ未知の部分が多く、
今回の分析では、ここまでのご説明とさせていただきます。


また、新堀川の浄化については、川底の水が入れ替わらないのを
どう改善するか、雨天時の汚濁物質の流入をどう防ぐか、
などの大きな問題に対して、まだまだ大きな壁が立ちふさがっていると
いうのが現実だと思います。


できることから少しずつ改善が進むことを願っている次第です。




次に、今回、水位の変化に着目して堀川・新堀川
の新たな分析を試みようというきっかけになった発見について
少しご説明をしたいと思います。



それは、冬になると堀川にやってくる、渡り鳥のオナガガモの生態に
ヒントがありました。



118ページをご覧ください。


堀川には、渡り鳥のカモである、オナガガモが
北清水橋付近にやってきているのに一年前から気が付いていました。


左上の写真がそのオナガガモの写真ですが、
コガモなどと比べるとやや大型できれいな羽をしています。


そのオナガガモは、右上の写真のように、
頭を水面に突っ込んで逆立ちするようにしてエサをとる
ユーモラスな姿を見かけることがあります。


しかし今年初めて気が付いたのですが、このオナガガモは、
私が毎朝観察する早朝の時間帯では、姿が見られる日と、
姿が見られない日があることに気が付きました。


そしてオナガガモを見かけるのは、堀川の水位が低い
干潮時間帯に近いこと、また逆立ちしてエサをとる光景を見かけるのは、
本当に水位が低くて川底が透けて見えるような時間帯で
あることに気が付きました。




そこで、毎日記録をとって行って調査隊の事務局の方に
整理をしていただいたのが119ページと120ページのグラフです。


ここでは、12月と1月の水位の変化を波グラフであらわしていて、
オナガガモを北清水橋で見かけたタイミングを赤い点で
プロットしてあります。



青い点でプロットしたのは、観察してもオナガガモが
見られなかったタイミングです。


赤い点を点線のまるで囲ってあるのは、オナガガモが
エサをとっているのを観察できた日です。




これをご覧いただくと、北清水橋では、TP50pより
水位の低いときにしかオナガガモが観察できなかったこと、

またオナガガモがエサをとっているのを観察できたのは、
TP0以下の、きわめて水位が低いときだけであることが
見事に見て取れます。


また、北清水橋付近にオナガガモがいないときは、
いったいどこに彼らはいるんだろうと思って、
調査隊のスタッフの方が名古屋城のお堀を見に行ったら、
なんと名古屋城のお堀で寝ていたのです。


その時撮影した写真が、118ページの下の写真です。


また堀川では北清水橋以外の場所では、この冬は、
ほとんどオナガガモを見かけることはありませんでした。




ここからは、私と調査隊事務局のスタッフの方の
想像に基づく仮説です。

オナガガモの仲間は夜行性で、昼間は休息していることが多いそうです。


堀川に飛来するオナガガモたちは、昼間は名古屋城のお堀で
休息していて、夜になると、日暮れから早朝の、水位が浅くなる時間帯に
北清水橋付近にやってきてエサを食べにくるのではないか。


では、なぜ北清水橋だけにやってくるのだろうか?


実は、北清水橋の下には、赤い色をしたイトミミズが
塊になって生息しているのを確認しています。


彼らは水位が低くなったときに、このイトミミズを求めて
この場所にやってきて、上げ潮になって水位が高くなって
エサがとれなくなると、しばらくの間ここで休憩していて
その後お堀に帰ってゆくのではないか?


エサをとっているときのオナガガモたちは、とても激しく
動き回っていましたが、水位があがって
餌をとっていないときのカモたちは、水面でゆったり休んでいて、
その後あっという間にいなくなっているというのも目撃しています。


名古屋城のお堀では、オナガガモ以外の鳥も
たくさん確認されています。


大陸から飛来している水鳥の生息地として、
堀川と名古屋城のお堀がとても有用な役割を果たしていることが
分かってきたことも今年の大きな成果であったと思います。



同時にこの発見が、水位の変化に着目して
堀川を見直してみようというきっかけになり 
その成果として、庄内川の導水や、名城水処理センターの
水質浄化に果たしている役割があらためて確認でき、
木曽川導水に期待がふくらんだことも大きな成果であったと思います。





最後に、堀川護岸の除草で改善した水環境と
今後の課題についてご報告します。


113ページをご覧ください。


2021年度に行われた調査隊会議で、私たちは、
浄化のために植栽された護岸のヨシが、
冬になっても刈り取られないままになっていることによって、
古い枯草が新しい草によって堀川に倒れこんで水面に落ち込み、
それが大量の浮遊物となって堀川上流部に滞留していることを指摘し、
名古屋市に護岸のヨシを刈り取っていただくようにお願いをしました。


これを受けて名古屋市が予算を確保していただいて、
2022年度に水辺の除草を実施していただき、
2023年度には7月と12月の年2回の除草を実施していただきました。


113ページにはまだ除草のされていなかった
2022年4月の田幡橋付近、金城橋付近の写真が
掲載してあります。


その右側には冬場に除草された後の2023年4月の写真が
掲載されています。

除草がされると明らかに枯れたヨシが見られず、
水面に落ちる浮遊物も減少したことがわかります。



14ページをご覧ください。


左上の写真は2023年(昨年)7月に1回目の除草を
していただいた後の写真です。


この時点では、護岸の雑木が残っていますが、
その後、この雑木も伐採していただきました。


その右側は10月17日の写真です。

この付近は前の年にはクズなどのツルが伸びる植物が
いっぱい育って、歩道まではみ出すほど繁茂していたのですが、
2023年は雑木を伐採していただいた効果で、こうした
クズの繁茂が減少することがわかりました。


除草や雑木の効果として水辺の景観が改善するとともに、
枯れたヨシや木の葉などの浮遊物が 年間を通して減少し、
それに引っかかってしまうペットボトルや空き缶などの
浮遊ごみも回収しやすくなっています。


そしてもちろん、川底に沈んでしまう枯草などの有機物も
減少する効果が改めて確認されています。


その一方で、課題も見えてきました。


114ページの左下の写真をご覧ください。


これは除草したときに回収しきれずに水面に落ちてしまった枯草です。

これが長期間にわたって堀川の水面を行ったり来たりしているのが
確認されました。


その右の写真は、枯草がごみキャッチャーまで流れてそこで
塊になってしまい、土日などにごみキャッチャーに回収されないまま
再び上流に流れてゆくうちに、ペットボトルやプラスチックトレーなどの
人工ごみを巻き込んでしまい、こうした人工ごみがごみキャッチャーに
回収されにくくなっていることも確認できました。


ごみキャッチャーから浮遊ごみが逆流するのを防止する仕組みが
絶対に必要だと考えられます。

また、そもそもこの付近は護岸の傾斜が急斜面になっていて、
この護岸の除草も結構大変で危険な作業になるほか、
いったん傾斜護岸にポイ捨てられたり風で飛ばされて
落ちてしまったごみは危険なため拾い上げることが
とても難しくなっています。


つい先日、3月10日にも、私の情報で中土戸橋の下の
護岸に投げ込まれていたごみを確認に行ってくださったのですが
北土木事務所の方が、ごみをひろうのに非常に危険を感じたそうです。


市民が入っていけない場所は、行政にお願いするしかないのですが
職員の方々に危険のないように、傾斜護岸を安全に管理できる工夫は、
ぜひ早急に対策をお願いしたいと思いました。



最後に皆さんにご報告とご相談したいことがあります。


1年前のこの調査隊会議で、名古屋市から詳しく説明いただいた 
「木曽川水系連絡導水路事業」のその後の進捗状況についてです。


 この導水路は、揖斐川上流に作られた徳山ダムの水を、
木曽川まで持ってくるために計画されたものですが、
昨年2月に、河村市長がそれまでの撤退方針を転換して、
ダムの水を有効活用しようということで、国に対し、
堀川の再生にもダムの水を生かしたいという提案がされました。


 あとで名古屋市からもご説明があるかと思いますが、
ここでは簡単に、私が市からお聞きしていることを
ご紹介したいと思います。


 名古屋市では、昨年6月に市役所内部に、
「堀川再生の推進に関する検討会」が設立されました。


この検討会には、国土交通省にもオブザーバーとして参加いただいて、
3月末までに7回にわたる検討会や有識者のご意見をうかがう懇談会が
開催され、これまで、そして今後の浄化施策の検討や課題の確認、
水質シミュレーション、今後の方向性について検討が進められてきたそうです。



 また、こうした名古屋市の動きと並行して、
国土交通省中部地方整備局でも、
愛知・岐阜・三重3県や関係自治体・河川利用者などから
意見を聴取するなどの手続きが進められているという報道もありました。



たとえば、現段階では私の個人的な意見ですが、
2年後の2026年9月には、第20回アジア競技大会が
愛知県・名古屋市などで開催され、国内外から
多くのお客様が名古屋に来られます。


この時には、ぜひ少しでもきれいになった堀川で、
お客様をお迎えしたいという気持ちがあります。


また、2007年から2010年まで3年間実施された
前回の木曽川導水実験は、その後14年間も経過し
その間、名古屋市の様々な堀川浄化施策の効果で、
堀川の水環境の基礎的な条件は随分と改善しています。


こういうよくなった条件の下で、もう一度
木曽川からの導水をする社会実験を行えば、
たとえ短期間でもその改善効果は
ものすごく違うことが予想されます。


私としては、ぜひその社会実験を再度実施していただき、
効果を確認したいという思いがあります。


こういう、一つはおもてなしの意義、

もうひとつは2度目の社会実験で堀川の水質が
どのように改善するかを確認できるという意義、

これを実現するためにぜひ、2年後のアジア大会を前に
堀川への導水を再開していただきたい。

これが私の個人的な意見です。


もし、この意見に皆さんにご賛同いただけるのであれば、
今後タイミングを見て国や名古屋市に堀川1000人調査隊として、
要望などを適宜行っていきたいと考えますが、いかがでしょうか。


また、こうした要望活動は、それにふさわしいタイミングがありますので、
その時期、やり方については、事務局にお任せいただけないでしょうか。

 ご意見があればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか?



 それでは、事務局に一任いただいたということでよろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。



以上で、34ステージの皆さんからの報告に基づく
市民調査結果のご報告を終わります。








   おともだちを誘って、みんなでたいっぱい調査隊、応援隊を作りましょう。

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