まず、表紙の2ページ、 黄色で表示されたものが、今回の報告書の中で特に新しく増えた項目ですので、今日はこれを中心にご説明させていただきます。
6.2.9 城北橋〜猿投橋間の「浮遊物」と「あわ」と「におい」について
6.2.10 第15回堀川一斉調査について
6.3.2 ヘドロ浚渫3年後の新堀川の変化について(秋~冬)
6,4.2 堀川・新堀川で、水鳥の仲間が多くみられる場所は?
6.4.3 小魚の姿が見られ、透明感が感じられた緩傾斜の水際
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本論に入る前に、この30ステージで見られた珍しい現象についてご報告します。
133ページをご覧ください。1月15日にトンガ沖で起きた大規模噴火による、いわゆる津波が堀川に影響があったかどうかです。
結論から言うと、私自身が1月16日の朝に現地で確認したことですが、堀川上流部の北清水橋から黒川橋間の護岸にくっきりと水の跡が付くほどの潮位の変動がありました。
水そのものも、今上流から下流に流れていたと思ったら、次の瞬間には下流から上流に向きを変えるなどとても複雑な動きをしていました。
水の流れもかなり速いのを確認しました。
あとで、名古屋港の水位の変化のグラフで確認すると、133ページのグラフがそれですが、大きな干満による波に、青い線で実際の潮位の変動が小刻みに続いていたことがわかりました。
これについては、動画がありますので、ご覧ください。
1月16日 午前4時50分 北清水橋で撮影
1月16日 午前5時50分 北清水橋で撮影 向きを変えて流れる
また、名古屋港管理組合からの情報では、堀川口の防潮水門を安全のため5門の内、4門を午前4時20分から翌日17日の7時24分まで閉鎖していたとわかりました。
2011年の東北の震災のときは、水門の構造が、押し寄せる波には強いけれども、引き波には強くない可能性があって閉められなかったと聞いていたその水門ですが、その後、補強することになったという報道があったので、もう引き波にも耐えられるようになったのかなと思っていました。
ただ、念のため名古屋市に確認していただいたところ、実は現段階では、この水門の本体は耐震補強が完了しているそうですが、ゲート自体はまだ対策できていないとのことでした。
従って、現時点では、依然として引き波にはまだ弱い構造なのだそうです。
ただ、耐震補強によって、上流に押し寄せる津波を防ぐ能力は向上しているので、今回の津波では、5門の内4門を閉めても大丈夫、少しでも堀川への影響を防いだ方がよい、という判断であったのかなと個人的に私は思っています。
しかし5門の内4門を閉鎖してもなお、堀川上流部で30p近い水位の変動がくっきり護岸に残っていたのは事実で、今回それを写真で記録することができたのは収穫だったと思います。
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次に、今年の冬はとても寒い日がありました。特に冷え込んだ2月7日の朝、これも早朝に私が現地で確認しましたが、上流では志賀橋、北清水橋付近、そして田幡橋から金城橋、城北橋付近で、水面から湯気がたちのぼってもやっているのを記録しました。
その写真が134ページの写真です。
この写真を撮影した時間帯は右上のグラフでわかるように、上げ潮の時間帯です。
金城橋や城北橋上流で湯気が見られたのは、おそらくですが、名城水処理センターの温かい放流水が上げ潮にのって川の表層を遡上して、冷たい空気に触れて湯気が立ちのぼったのではないかと思います。
これについても、動画がありますのでご覧ください。
2月6日 田幡橋にて撮影
一方で志賀橋や、北清水橋については、別の要因であることも考えられます。
と言いますのは134ページの右下の写真は国土交通省の八田川の監視カメラの写真ですが、八田川の水面からも湯気がたちのぼっています。
八田川の水は、水分橋から堀川に入ってきていますので、志賀橋付近の湯気は、八田川からの水温の高い水が空気で冷やされて立ち上った可能性もあると思います。
あるいは、城北橋の水処理センターの水が遡上したことによるものかもしれません。
断定的なことは言えませんがこのふたつが関係している可能性があります。
この冬観察していて確認したことですが、単に水温が高く、空気が冷たいだけでは湯気は立たないこともわかりました。
雪が降っているとか、前夜まで雨が降っていたとか、湿度が高い状態であることも必要なようです。
そういう意味でこの冬は、とても貴重な記録を残すことができたと思っています。
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さて、本論に入ります。
9ページをご覧ください。
右側の表の下に、これまでの調査結果の報告数8,224件と書かれています。
これが、皆さんが調査し報告いただいた15年間のトータル数です。
平均すると、毎年約500件以上の調査が実施され、報告されています。
これは、とてもすごいこと、名古屋市民のパワーとして誇ってもよいと思います。
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次に11ページをご覧ください。
30ステージの気象条件はどうだったかというと、9月12月の平均気温は平年並みで、10月前半に気温が高い日が続きましたが、そのほかは平年並みでした。
降水量は平年より少なく、期間を通して1mm未満の日が74%をしめていて、反対に50mm以上の大雨が降った日はありませんでした。
日照時間も平年並みでした。
そうした気象条件のもと、30ステージがどうであったかが、26ページの一番下に書いてあります。
皆さんの報告によれば、「水の汚れの印象」は、朝日橋より下流に向かって大瀬子橋までの間で改善が見られました。
特に、松重橋〜大瀬子橋の間では、きれい、ややきれい、どちらともいえないの合計が92%にもなっていました。
また、猿投橋から大瀬子橋までの広い区間で見ると、ひどく臭う、ややひどく臭う、の割合が減少し、無臭の割合が95%まで増加しました。
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これをグラフ化したものが27ページと28ページに掲載してあります。
グラフにすると長期的に改善傾向が見て取れると思います。
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長期的な改善傾向ということに関連して、ちょっととびますが、81ページをご覧ください。
ここには、昨年11月19日の部分月食の日(つまり特別に水位の変化の大きい大潮の日)に実施していただいた、第15回堀川一斉調査の結果がまとめてあります。
結論から申し上げますと、この11月19日の日には、あっと驚くような現象は報告がありませんでした。
しかし、長期的な観点から見ると、この日の調査はデータの蓄積と事実の記録という意味で非常に大きな意義がありました。
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85ページをご覧ください。名古屋港の潮位と気温をグラフにしたものです。
青いグラフが11月19日の部分月食、オレンジ色が半年前の5月26日の皆既月食の日のグラフです。
見ていただくと真ん中の正午のころの潮位の下がり方が、オレンジのグラフと比べて青いグラフはあまり下がっていないことがわかるかと思います。
つまり、私たちが調査を行う昼間の時間帯は、特別な大潮といっても、干潮時の水位の低下が5月に比べて11月はそれほど大きくありません。
これは地球の自転軸が少し傾いていることによっておこる春夏モードと秋冬モードの違いで、春夏は昼間の干潮時に大きく水位が下がり、秋冬は夜間の干潮時に大きく水位が下がるという現象になるためなのだそうです。
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そして86ページをご覧ください。右側の黄色い四角の中の黒い文字です。
半年前の5月に行った一斉調査と比較して、川底のヘドロの巻き上げは報告されなかった、その他の変化、つまり魚類等の生き物、潮の先端の水面に集積する浮遊物は報告されなかった、とありますが、春に比べて秋は、大きな変化が確認できなかった、という結果になりました。
それでは、一斉調査を行う意義は何なのか?
この一斉調査は、私たちが普段思い思いの日にち、思い思いの時間帯に調査活動をしているのに比べ、少なくとも特別な大潮の日に合わせて、みんなで一斉に調査し記録を残す、ということに意義があると考えています。
普段の調査活動は、いろいろなデータを集めることによって、特定の日だけではない、堀川の平均的な姿が長期間の間にどう変化するかをとらえることができます。
それが先ほど27ページ28ページでご説明させていただいたものです。
それに対して一斉調査は、同じ条件の日のデータを何回も繰り返し集め蓄積することにより、長期間の堀川の変化が一層鮮明になってわかる可能性があると考えています。
今回の調査結果だけで、何かを言いきれるということはなくても、継続することで、データが蓄積し、いつの間にか堀川がこんなに変わっていた、ということを証明できると考えています。
そのためのデータの蓄積そのものが重要だと考えて、これからもできるだけ一斉調査を行ってゆければと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
次回は11月9日に皆既月食がありますので、この特別な大潮の日に行います。
今回も昼間はおそらく干潮時の水位は大きく下がらないと思いますが、ちょうど一年後に同じ時期の同じ条件の日に一斉調査を行うことにより、長期的な変化を見ることができるという意義があります。
ご参加いただける方はどうぞよろしくお願いします。
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さて次は、本日もっとも中心的な報告になります。
この半年間、私自身も現地調査を行いましたが、皆様からいただいた報告を含め、城北橋から猿投橋の間を集中的に調査を行い、これまでも指摘されていた問題について色々な気づきを得ることができました。
本日は、この気づきを行政の皆さんにも共有いただき、提言や提案とまではまだ至りませんが、要望に近い形でお聞きいただき、この後の行政報告、意見交換を堀川の浄化・美化のために活用していただきたいと思います。
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それでは、68ページをご覧ください。
左側の(1)から(4)に市民の気づきとして整理してみました。
まず(1)です。北清水橋付近では、資源ごみの回収日の当日、または翌日、翌々日に資源ごみの袋が水面に浮いているのを、ほぼ毎週、百発百中に近い確率で確認したということです。
これは、資源ごみの回収日に、中身の空き缶を抜き取って、いらなくなった袋を一つの袋に詰め込んで、いらなくなったその袋をポンと川に投げ込んで捨てたのではないか、という疑いを捨てきれないわけです。
それ以外にも、路上であるとか、人が拾えないような護岸の斜面に散乱しているごみを、たくさん確認し写真で記録にとりました。これらは、一握りの限られた人がやってることだと思いますが、いったいどうしたらいいの?と、私たちは途方に暮れるわけです。
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69ページの右上の写真をご覧ください。
猿投橋の資源ごみの回収場所から空き缶がごっそりなくなっていて、空き袋が川の中に投げ込まれていた様子です。
それが真ん中の写真です。
ちょうどこの回収場所の下は、急斜面になっていて高さもあって落ちると危ないので、たとえば、回収時間に間に合わなくて遅れてきた人が袋を護岸の柵の向こうに投げ込んだものが、いつまでも除去されずにそのままになってしまっています。
それが上の段、真ん中の写真です。
左上の写真は、浄化のために植えられたヨシの茂みに、水面に落ちたごみが引っかかっている写真です。
田幡橋から金城橋、城北橋の間でこうした光景がいつも見られます。
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70ページをご覧ください。
左上の写真は12月19日に北清水橋の近く(実際には黒川橋に近い)に捨てられていた、ベッドに敷くマットです。
ひもにしばって5時から6時くらいの間に投げ込まれていました。
5時には浮いていなくて6時に私が見つけて写真に撮ったあと、護岸の近くにあったので、ひもに指をひっかけて引っ張り上げようとしたのですが、失敗しました。
水面に頭を出しているところは濡れていなかったのですが、大半は水中に沈んで水を吸って無茶苦茶重く、自分の指が切れてしまってけがをしたため、引き上げるのを断念しました。
後日、ナゴヤSUP推進協議会の皆さんが、SUPに乗って水面から引き揚げてくださいました。
その様子がその下の写真です。
その右側がビニールごみのいっぱいつまった資源ごみ袋です。
これもSUPの方々が時々引き上げてくださっています。
悔しいのですが、このビニール袋は、西風の抵抗でゴミキャッチャーまでたどり着かず、金城橋付近のヨシの茂みに引っかかってしまっているのをよく見ます。
またせっかく城北橋までたどりいてもゲートの開く時間に間に合わなかったり、形状の問題などでゲートに入らない、またたま護岸近くに流れついていて引っ張り上げようとしても、長い間水につかっていたビニール袋は、ビニール自体が劣化して、引っ張り上げようとすると、重みで袋が破れて中のものがでてきてしまったりします。
本当にたちが悪く、いつまでも同じごみが上流から下流まで行ったり来たりしている姿を、実にによく見ました。
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もういちど68ページにもどって(2)をご覧ください。
堀川の水は名古屋港の潮汐・つまり干満の変化で、遡上、降下を繰り返していて、浮遊物が(それには人工ゴミもあれば枯草などの自然ゴミもあるのですが、潮汐による流れや風の影響を受けて移動しています。
このため、ゴミキャッチャーのゲートが1日1回開くときに、浮遊するゴミが下げ潮になってもまだゲートの前にたどり着いておらず、回収されていないのをよく見たのです。
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これはどういうことか、といいますと、71ページをご覧ください。写真を見ると、干潮時間になって潮が下げ切って、城北橋より上流部のごみがほとんどすべてゴミキャッチャーに集まっているのですが、ゴミかごに回収されていないのです。
そして潮が上げ始めると、ごみはそのままゴミキャッチャーから逃げ出すように上流に遡上していきます。
そして約12時間後の次の干潮にもどってきて、でもやはりゴミかごには回収されていない。
こういう状態が多かったことが確認されたのです。
一例として、1月25日と1月26日の様子をグラフでご説明します。
ゴミキャッチャーは、水位センサーによってゲートが開閉しています。ゲートの開くのは1日1回、5分間だけです。
土日、祝日、大雨の日は、下水処理施設の保護やメンテナンス上の理由からゲートが開きません。
さてその水位センサーが感知する水位のことですが、厳密にいうと正確ではないですが、我々素人が理解しやすいおおよその話でいうと、名古屋港の水位(NPといいますが)が満潮の後、水位が下がり始め180pの水位になったときに、潮が下げ始めたということを認識します。
そして170pまで下がった時にゲートを開きます。
そのゲートは5分間開いてゴミを川の水とともにゲートの中に落とし込み、ゴミかごで回収する仕組みになっています。
さて、このグラフですが、この日は小潮で、満潮は午前10時32分、満潮時の名古屋港の水位は194pでした。
170pになったのはおそらく12時ちょっと過ぎです。
でもこの時には、おそらく北清水橋付近まで6時間半くらいかけて遡上していったごみは、満潮からわずか1時間半では、とうてい戻ってくることができません。
ゲートは5分間で閉まってしまいますから、そのあと、遅刻して続々とゴミキャッチャーに到着したごみが左上の写真です。
写真を撮ったタイミングが16時25分、上のグラフで、青い丸がついている、水位が一番低い時間帯です。
このごみは、深夜にかけてもう一度、水位の上昇とともに上流に戻っていきます。
そして翌朝にかけて下げ潮に乗ってゴミキャッチャーに戻ってきます。
しかし、夜間にはゴミキャッチャーはメンテナンス上の理由からゲートは開きませんから水位が下げ切った時間帯にはそのまま戻ってきてまたゴミキャッチャーにたまってしまいます。
その写真が下の写真、撮影した時間は翌朝1月26日の5時18分です。
下のグラフの青い丸がついている水位が下がりきった時間帯です。
名古屋港の予定水位は、城北橋に伝わるのにタイムラグがありますので、正確にゲートが開く時間を予測して撮影することはできませんので、ゴミを回収する瞬間の写真はとることができませんでした。
しかし小潮のときはほぼ確実にゴミは戻ってこられない、下手をすると満潮時でも180pの水位より高くならないこともありました。
中潮のときもほとんど戻ってこられない、大潮のときは、上流深くまでごみが行ってしまって、下げ潮のスピードは速くても、城北橋まで戻りきれず金城橋付近で止まってしまっているのも目撃しました。
また冬は西風が強くて逆風に阻まれて下げ潮なのに、上流に向かってゴミが流れている場面にも遭遇しました。
ちなみに私自身が2月の1か月間観察していて、ゴミキャッチャーがほぼ確実にごみを回収していたのは、2月1日から4日の新月の大潮の4日間と、2月15日の中潮の日の5日間だけでした。
そして2月16日からの満月の大潮の4日間は、なぜかわからないのですが、浮遊するゴミは金城橋下流で下げどまってしまい、城北橋まで帰ってこず、また上流に戻っていってしまっていました。
3月になってからの新月の大潮では、ゴミがかなり減っていたので、ゴミキャッチャーが回収したのではないかと思っています。
これがゴミキャッチャーという名古屋市の浄化施策の効果を検証するために、今回集中的に観察した結果の私たちの気づきです。
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もういちど68ページに戻って(3)をご覧ください。
以前から、猿投橋では、毎年11月くらいから、庄内川の導水があるとき、水面が真っ白になるほどの泡がたつこと、そして、猿投橋の滝の付近では、鼻をつんと突くようなパルプ臭のようなにおいが発生することが指摘されていました。
その原因について、水分橋から導水するときに晴れの日が続く冬場に泡が多くなるということまではある程度わかっていました。
それを今回、集中的な調査によって数値的にもある程度説明することができるようになりました。
また、その泡が、猿投橋付近に停滞して渦を巻いていたり、下流に流れていって北清水橋付近まで泡で真っ白になることがあることもわかっていましたが、今回の集中的な調査で、泡が停滞したり流れ出したりするのにいくつかのパターンがあることがわかってきました。
それが(3)と(4)に書いてあります。
読んでみます。
(3)
@ 庄内川の導水があるときは、滝の下で泡立ちが増加する。
晴天が続くと、庄内川の流量が少なくなり泡立ちが多くなる傾向がある。
これを今回、国土交通省が公開している庄内川の味鋺の観測地点の水位でみてゆくと、晴天が続いて流量が少なくなると、川の水位の水位が低くなりますが、そういう時は泡立ちが多くなる傾向がはっきりわかってきました。
A 庄内川の導水があるときは、パルプ臭がするときがある。
それはちょっと長く吸っていると気分が悪くなる時がある、これは私自身が経験しました。
B 滝の下で泡立ちが多いときは、パルプ臭がする頻度が高いことが数値化できました。
C 庄内川の導水があるときは、滝で発生した泡が、猿投橋のすぐ下流で集積する、つまり泡がたまった状態になる頻度が増加する。
泡立ちが多いときは、泡の集積が増加する。
D 滝の下の下流に泡が集積する時は、パルプ臭がすることが多い。
(4)です。
猿投橋下流で発生する泡の集積(つまり泡がたまる)メカニズムがわかってきた。
泡の集積は、名古屋港の潮汐(つまり満潮や干潮)、気象条件、猿投橋の下の川底の形状(どろがたまってマウンドのようになっている場所があるんです)、大幸川の出口のへこみなどが複雑に関係していることがわかってきました。
さらなるメカニズムの解明には観察の継続が必要である。
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それでは、72ページをご覧ください。
左上の写真は、庄内川からの導水が停止していて滝から水がほとんど流れ落ちていなかった11月18日朝6時27分の写真です。
この写真のように、庄内川の導水のない中潮や大潮の満潮時間帯には、ゴミキャッチャーから逃げてきたゴミが、導水に押し返されないために、猿投橋の滝の下まで遡上してくることが時々あります。
写真下がその4日後、庄内川の導水が再開した大潮の満潮時間、朝6時23分の写真です。
実はこの30ステージでこの11月22日が最も激しく泡立った日でした。
その泡立ちの激しさを何とか数値化しようと考えたのが泡立ち率です。
毎日、同じ場所で、同じアングルで写真を撮り続け、その写真上で、滝の幅を分母にして、泡がどこまで広がっているのか、つまり長さを分子にして「泡立ち率」と名付けて数値化しました。
泡が激しく立っている日は、泡の長さが長くなり、泡立ち率が高くなります。
あくまでも写真から長さを測っているので、もちろん誤差はあるのは承知の上ですが、何らかの数値化が必要と考えてこの数値を毎日の写真から割り出す作業をしました。
72ページ右側の写真は参考資料です。上の写真は庄内川から堀川に取水する元入樋門(左岸)を右岸側から撮影したものです。
下の写真は元入樋門から堀川に水が流れ来る様子です。
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さて、73ページをご覧ください。
上のグラフは青い線が庄内川の味鋺観測点の水位を9月から12月の4か月間グラフにしたものです。猿投橋の写真は、ほぼ毎日6時から6時30分の間に撮影していますので、庄内川の水位はその直前の午前2時から6時の平均値をとってグラフ化してあります。
グラフのオレンジ色の棒は泡立ち率です。赤いドットが打ってあるのは、様々な理由で庄内川の導水が停止している日です。
見ていただくと一目瞭然ですが、赤いドットのある日、つまり庄内川の導水のない日は、泡立ち率はほぼゼロです。
つまり導水が止まるとほとんど猿投橋では泡が立っていません。
次に青いグラフを見てください。庄内川の上流で雨が降ると庄内川の水位は当然上昇します。
左から見てゆくと9月中は秋雨のシーズンで比較的雨も多いせいか、庄内川の水位は高い日が多いので泡立ち率はさほどでもありません。
しかし10月になると雨降りが少なくなり、庄内川の水位が下がってきます。
それに伴って泡立ち率は10月から棒グラフの背が高くなってきます。つまり泡立ちが激しくなってきます。
しかしよく見ると雨が降って庄内川の水位がポンと高くなると、オレンジの泡立ち率の棒グラフはすとんと低くなります。
11月は雨が少なくて庄内川の水位が低いのですが、産卵期を迎えたアユの保護のために、水分橋で庄内川をせき止めるのをやめて自然の流れに戻すために、堀川への導水停止日が増えて、あまり泡が立たなくなっています。
しかし、11月22日のところを見てください。導水が再開して数日後の11月22日が、最高に泡立ち率が高くなり、そのあとまとまった雨が降って水位が上昇し、導水が停止したこともあって泡が立たなくなっています。
12月は、前半は泡が多かったのですが、後半になると不思議に泡があまりたたなくなりました。
その時は、庄内川、それもおそらく八田川に流れ込む事業所の排水などが、年末で稼働率が下がってひょっとすると減少したのかなと想像していましたが、はっきりした原因はわかっていません。
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73ページの下のグラフは縦軸に庄内川の水位、横軸に猿投橋の泡立ち率をプロットしたものですが、晴天が続いて庄内川の流量が少なくなると泡立ちが多くなる傾向があることを表しています。
つまり、今までなんとなく皆さんが感じていた、雨が降って庄内川の水が薄まると泡が立たなくなり、晴天が続いて庄内川の水が濃くなると泡立ちが激しくなる、そういうことが、集中的な調査によって説明ができるようになりました。
本当は、水分橋のところで八田川と庄内川の本流が交わり、そのブレンド率によって泡の立ち方が違うのではないか、つまり、八田川からの水量はあまり変化はなさそうだが、庄内川本流のほうは雨が降ると一気に増水する、本流が増水すると八田川の水が薄められ、それで猿投橋が泡立たなくなるのではないか、という推測に近い仮説をもっているのですが、今回の集中調査では、そこまでの検証はできませんでした。
ただ、この白い泡を発生させる水の水質、泡が立つときに橋の上まで上がってくるにおい、つまり揮発性のガスだと考えていいと思うのですが、それが本当に安全なものなのかどうか。
現実に気分の悪くなる思いをした私としては、ぜひきちっと調べてみていただきたいという気持ちを持っています。
この件については後で触れます。
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さて、次の話は、興味程度に聞いていただけばよいので、簡単に触れますが、76ページをご覧ください。
先ほどから、泡の集積(つまり泡がたまった状態)が発生するという言葉を使いましたが、76ページの写真の上が、猿投橋の滝で泡が発生する様子、真ん中の写真があわが水面一面にたまっている様子(これを集積と呼んでいます)、そしてその下が志賀橋より下流まで泡が流れ出してきている様子です。先ほどお話した11月22日、この冬一番泡立ちが激しかった日です。 |
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この泡のたまり方にパターンがあることがわかってきました。
まず76ページ左側の図を見てください。これは満潮に近い上げ潮時間帯で、名古屋港から上がってくる水で水位が高く、上げ潮で下流から水が押し上げている状態です。
泡は下流からの押上げによって下流に流れてゆくことができず、猿投橋から志賀橋の間の水面に泡がたまって真っ白になっています。
下の写真は黒川橋付近で泡が上流に押し返されている様子です。
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77ページをご覧ください。
これは満潮から下げ潮に転じたタイミングの様子です。
下流から押し上げるパワーがなくなり、下げ潮に転じると、たまっていた泡は、急速に下流に向かって流れ出します。
右側の写真を見ていただくと、上の写真でわかるように猿投橋で泡は発生していますが、真ん中の写真でわかるように、泡は集積せず、つまりたまっていることができなくなってどんどん画面向こう側の志賀橋の方に流れてゆきます。
泡は猿投橋と志賀橋の間でたまっていません。
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78ページをご覧ください。
これは、もっと潮が下げて水位が低くなった状態です。上の写真を見るとわかりますが、滝の下には少し土砂がたまって川底が高くなっていますので、滝で発生した泡は護岸沿いに走るように流れます。左の図を見ていただくとわかるのですが、猿投橋の下流には、もう少し先に、マウンドのように川底が高くなっているところがあることが泡の流れを見てわかってきました。
水の流れはこのマウンドに遮られて渦を巻くようにもういちど上流の方に戻ってきて泡がたまり集積ができます。
護岸近くをすり抜けるように下流に流れた泡は細かい白い泡となって下流ににひろがってゆくようです。
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79ページをご覧ください。
もっと水位がさがってくると、これはよく理由がわからないのですが、あわそのものがほとんど見えなくなります。
淡い泡が真ん中の写真のように渦を巻いているときもありますが、鳥がたくさん集まってくるような浅瀬やせせらぎができる時間帯になるとほとんど泡が見えなくなることが多いです。
上げ潮になって水位が上がってくるとまた泡がたまってくるのですが、本当に浅いときはほとんど泡が見えないことが多いです。
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80ページをご覧ください。
干潮から上げ潮に変わって水位がだんだん上がってくると滝の下で発生した泡がマウンドを超えて細かい泡になって志賀橋の方に流れ出します。
これは、この冬、早朝の決まった時間帯に観察を続けた結果、少しずつ見えてきたパターンでして、毎日同じ時間に見ていても、干潮満潮の時間帯は毎日変わってゆきますので、なかなか同じ条件で同じ現象が繰り返すかどうかを完全に検証することはできません。
しかし、11月から最近までずっと見続けてきて、ほぼ間違いないだろうなと思われましたので、本日ご報告させていただくことにしました。 |
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さて、そこで、68ページにもう一度戻ってください。
城北橋から猿投橋の間で気づいた左側の1から4の気づきに対して、本日、事務局として次のような要望をしたいと思いますので皆さんのご賛同をいただければと思います。
1. 最近のごみのポイ捨ての多さは、本当にひどくなっていると思います。
特にコロナの問題が長引いて、市民の清掃活動がなかなか進まない中、ゴミがゴミを呼ぶ、という状態になっています。
2. 堀川や新堀川とその周辺を重点化したポイ捨て、放置、散乱等を禁止し、違反したものに過料する条例などが設定できないものか、看板などをもっと設置できないものか
また急傾斜の護岸にごみが落ちないような何か工夫はできないものか。
これらは、以前第28回調査隊会議でも要望したものですが、なかなか実現がむつかしいということもおっしゃられていました。
しかし、海のマイクロプラスチックごみが問題になっている中、海に流出してしまいかねないポイ捨てごみをこのまま指をくわえて見ていてよいものかどうかという点からもぜひ何とかご検討をお願いしたいと思います。
ついでにご質問もしておきますが、資源ごみから空き缶を抜き取るという行為は、自治体によってははっきりと禁止されているところもあるようですが、名古屋市の場合はどうなっているのでしょうか。
また特定の人の行為だと思いますが、缶だけ抜いて残った袋を投げ捨てる行為はとても許されるものではないように思うのですが、何か手立てはないものでしょうか。
それから、私たちが期待してきたゴミキャッチャーが、なかなか活躍できていない現実がわかってきました。
ゴミキャッチャーをもっとうまく活用できる方策はないものでしょうか?
それから、ゴミキャッチャーと上流を行き来しているごみの大半が、枯草のかたまり、もっというと田幡橋から城北橋の間に植えられているヨシの枯草であることがはっきりしてきました。これが堀川の見た目を悪くしています。
汚く見える堀川にはゴミを捨てることに抵抗を感じない、いわばゴミがゴミを呼ぶ原因になっていると思われます。
もともとは、浄化のために植えたヨシだと思いますが、今のようにある程度ゴミさえなければ水はきれいになってきた堀川上流部で、浄化を目的に植えたヨシがかえって堀川のごみとなって川を汚してしまっている皮肉な結果になっているのが実態です。
また枯草は、腐って沈めばヘドロの元になり、大雨でも降ればゴミキャッチャーをすり抜けて下流や海に流れていってしまいます。
例えばヨシを刈り取ってしまうとか、適切なというか定期的な刈り取りをするなどの管理・手入れはできないものでしょうか。
猿投橋の泡とにおいについては、そもそもこの泡やにおいを発生したり集積したりすることを減らしてほしいとは思います。
しかし最低限、この泡が発生するような川の水の水質や、気分が悪くなるようなにおい、というかガスが安全なのか、有害なのか、最低限これだけは確認をしておいていただきたいのですが。
これらを私たちの要望として名古屋市さんに申し上げたいと思います。
⇒この要望に対する名古屋市との意見交換の結果はこちら
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さて、最後に、堀川の生き物、特に鳥の状況について今回皆さんからいただいた情報や写真をもとに整理してみましたので、簡単にご説明させていただきます。
まず116ページをご覧ください。
堀川では、2017年7月26日に下流部でボラやコノシロが5000尾死んだのを最後に、魚の大量死が今日で1,697日間発生していません。
これ以前は、ほぼ毎年魚が大量死する事件があったことを考えると、堀川の水質がかなり改善していることがわかるわけですが、それに伴い、堀川で鳥を見る頻度が増えていると思います。
ただ、本当に魚を狙っている鳥だけではなく、植物を食べる鳥もいれば水面の魚を狙うカワセミ、水中にもぐって魚をとるカワウなどいろいろなタイプの鳥がいます。
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123ページをご覧ください。
この30ステージでは皆さんにお声がけして、鳥が写っている写真を場所や時間がわかるようにして送っていただけませんかとお願いしたところ、かなりの写真が集まってきました。そのごく一部がこの写真です。 |
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そのごく一部がこの写真です。119ページから122ページをご覧ください。
堀川と新堀川で鳥を見かけた場所と、その場所でみた最大の数をグラフにしたものです。
緑色のグラフは水面でえさを取るタイプの鳥、青い色のグラフは水に潜ってエサを取るタイプの鳥、グラフの高さは、その場所で調査期間中にみた最大数を表しています。
そうすると、堀川でも新堀川でも場所によって、集まる鳥の種類に違いがあることがわかってきました。
グラフの下に、それぞれの地点の特徴を書いてあります。
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120ページと122ページは、撮影した鳥を水面でえさを取る種類と、潜ってエサを取る種類にわけて、右側の表には、それぞれの鳥がどんな食べ物をどのようにして食べているのかを整理してあります。
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さて、119ページを見ていただくと例えば水に潜ってエサを取る種類が多くみられる田幡橋から
東田幡橋付近の特徴は、エサが水面、水中に流出移動してくる場所、とか、動植物等が護岸の水際や川底で生息、生育、繁殖し、それを捕食できる場所、であるとか、水面が広がり、右岸側が高さのある直立護岸になっていて、安全で快適な水面がある場所とかいう特徴がありました。
一方で、水面のエサを取る種類が多い黒川橋から志賀橋にかけては、エサが上流から流れてくる、エサが潮の干満で移動、集積する場所であるとか、動植物等が護岸の水際や(浅い)川底で生息、生育、繁殖しそれを捕食できる場所であるとか、水面がやや広がり護岸が垂直に立っていて安全で快適な水面と水際がある場所、などの特徴がありました。
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これらを整理してみたのが117ページの表です。
堀川・新堀川で水鳥の仲間が多くみられる場所はどんなところでしょうか、という問いに対し
こんな仮説を立ててみました。
1.エサがある場所
2.飛び立てる場所があること
3.休める場所、寝られる場所があること
鳥が飛び立つにもいろいろな飛び立ち方があります。
117ページの左の黄色い四角の中の特徴をご覧ください。
水面でえさを取る種類は、おおむね足が体のほぼ中央にあり歩行が安定しています。
翼で水面をたたき、水柿で強くけってそのまま上に飛び立ちます。
一方右側の青い四角の中の特徴をご覧ください。
潜ってエサをとる鳥の仲間は、おおむね足が体の後ろの方にあるため、体が立ち気味になってしまい歩行はあまり得意ではありません。
飛ぶときは、大きな水柿で水面をけりながら羽ばたいて、助走をしながら飛び立ちます。
ですから、潜ってエサを取る鳥の多くは、飛び立つ区空間が水面でえさを取る鳥の仲間よりたくさん必要と言われています。
117ページのホリゴの吹き出しをご覧ください。
今後、水鳥たちが多く確認された場所の環境などをさらに詳しく観察・記録・整理することで、都市域の水辺に飛来する水鳥たちが好む水辺の姿が明らかになり、今後の都市部の水辺づくりの方向性がみえてくるのではないかと考えています。
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このほか、もう一度2ページを見ていただくと、6.3.2
ヘドロ浚渫3年後の新堀川の変化、6.4.3.小魚の姿が見られ、透明感が感じられた緩傾斜の水際という新しい記事が掲載されていますが、時間の都合もあり、とりあえずここは後で目を通していただくことにして、とりあえずこれで、事務局からのご報告を終わります。
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